『ちんぷんかん』

しゃばけ』シリーズの文庫新刊が出ていましたね。早速買って読みました。しゃばけは、いつからか別れの寂しさを題材にすることが多くなったように思います。一番最初は、三春屋の妹さんがお嫁に行く話しかな。今回も、そんな別れの話が入っています。今回はいろいろと若だんなの周りは、いつもよりも騒がしいようです。まずは通町が火事になる。そんでもって若だんなが死に掛けるのが『鬼と子鬼』。それからしばらくして、兄・松之助の縁談やら店の建て直しやらでゴタゴタした若だんなが広徳寺へやってきたのが『ちんぷんかん』。その後店の建て直しが続く中で、母・おたえの昔話を聞く『男ぶり』。新しく完成した店と、松之助の縁談話が中心の『今昔』。そして最後が若だんなと妖、小紅と若だんなの別れにまつわる話『はるがいくよ』。
私個人的にうれしかったのは、広徳寺のお話があったことと、金次の再登場ですね。広徳寺の御坊はなかなかに爽快な方なので、とても好きです。今回はそのお弟子の秋英の話でありますが、彼の今後がとても気になります。そしてやっぱり、金次。前作をすでに読破した方にはおなじみだとは思いますが、この金次が本当にいい味を出しています。彼のもつ力が未知数なのがよりいっそう彼を不気味たらしめていていいですね。あの飄々とした性格は好きです。
それはともかくも、今作品は前作と比べてまた格段に書き方が変わったようにも感じます。以前からのやわらかいタッチはそのままに、より軽快さが増したとでも言いましょうか、以前の作品には見られなかった文章がところどころで見ることができます。その最たるものが、繰り返しでしょうか。文学の表現方法についての知識がないので、このような書き方をなんと言っていいのかわかりませんが、同じ調子の言葉をつなげるやり方、とでもいいましょうか。それが今回は時々見受けられたように感じます。より読みやすく、軽快な物語になっているのではないでしょうか。
ああ、それにしても、本当に私、異種族間交遊話に弱いです。『はるがいくよ』はホントあかんです…。

ちんぷんかん しゃばけシリーズ 6 (新潮文庫)

ちんぷんかん しゃばけシリーズ 6 (新潮文庫)