『イン・ザ・プール』

友人に、アニメのほうの『空中ブランコ』を薦められて、うっかり原作を買いました。アニメも最新話まで見ましたよ。まずは本の話。

有名なのは知ってたんだけど、表紙に面白みを感じなくて買ってませんでした。これ、表紙で損してると思うんだけど、どうでしょう。ああ、帯は今回も有名になってからなので、伊良部シリーズゴリ押しって感じでした。アニメもやってるしね。体裁は短編集で、その各話の主人公が伊良部の病院に来るというシナリオ。患者のキャラクターも面白いですが、やはり伊良部のキャラクターが強烈ですね。文体にこれといって特別な印象はありませんが、それでも際立つ伊良部のうざさ。小説ではただの中年太りのキモイ精神科医です。性格面はいたって子供。まぁ、だけど大人だけど。作中は主人公の患者の視点で動くので、そんなに伊良部は出てきません。所々で出てきて、常識では考えられないようなアドバイスなんかをしたりします。所謂キーマンが伊良部。そして伊良部でこの世界は繋がっている。本当に伊良部はただの駄目なおっさんでしかない。精神科医っぽいことなんて、これっぽっちも言ってない。ただはなしを聞いて、自分の好奇心だけで話をしているように感じる。そんでもって、異常に注射が好き。マユミちゃんのキャラクターはアニメとあまりギャップはなかったかな。

アニメの話。きっとこっちのほうが長い。まあ、所詮私はアニメを1話見てしまってから小説を読んだので、小説を読んだ時点でアニメの世界観に侵食されていたということでしょう。まあ、侵食もされますわ。あんだけ強烈なカラーだったら。まずは伊良部。なぜ、大中小の大きさがあるのか。そしてなぜ熊。なぞ過ぎる。大の体型が一番原作に近いと思われます。中小はなんなんだろう。ヴィジュアル的には一部層を狙っているようにも感じるけど、だったら最初から中形態のままとかでいいわけですよね。それと、患者が動物にたとえられるのがとても不思議。注射を打つと、患者が動物になる。それから、伊良部が大中小と変化を始めて、どこまでも着いていく。それが部屋だろうが、グラウンドだろうが。なんだ?伊良部って妖精かなにかなの?みたいな。あれは患者のすべて空想??ともとれます。声優の顔と患者の顔を半合成する演出も新しくて面白いです。私は嫌いじゃないかな。斬新という言葉がこれほど似合う作品も珍しいだろう。現代アート的な、そんなアニメ。色使いも世界観も、演出方法も、なんもかんもなんか変。変って言うとおかしいけど、とにかく変。なんでみんなあんなビビットな色なの?なんで水玉?OPとEDが電気グルーヴなんて、もうまさにという感じ。あれは、墓場のイメージがとても強いですが、こんなポップ調のアニメにはとてもよく合っていると思います。そうだな。全然雰囲気違うけど、墓場と匂いがかぶるかな。あれも不思議な絵のアニメだった。あと1話で完結なので、楽しみに待っています。

イン・ザ・プール (文春文庫)

イン・ザ・プール (文春文庫)