『予告された殺人の記録』

後期の授業で使うので、一足先に読んでみました。恩田陸の『ユージニア』の後にこれを読んだのはほとんど運命かもしれません。これはある男が早朝の賑やかな町で滅多刺しにされて殺された事件を追った記録になっています。『ユージニア』の「忘れられた祝祭」と共通点を感じます。あれもある事件を追って書かれたものでしたし。『ユージニア』はそれも含めて、また事件を追いなおしたという形態をとっていますね。こちらの作品は本当に実際にあった事件がモチーフのようで、結構生々しいというか、人間臭い、雑踏や土ぼこりを感じる作品です。町にいる人はその男が殺されることを知っていた。だが誰もそれを彼に伝えなかった。伝えられなかった。偶然が作った必然。成田良悟の作品から娯楽性とアニメチックな要素を取り除いたらこんな作品になるんじゃないかと思います。中身については授業でやるっぽいので、今は流し読み程度でとどめておきます。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)