『オーデュボンの祈り』

早速ですが、読みました(速)私はどうやらミステリが好きなようです。手に取る本手に取る本、ことごとくミステリ。これもミステリ作品でした。

「オーデュボンの祈り」というタイトルは、最後まで読めばとてもしっくりくる。それまでは、一体なんのことやらという感じである。前にも書いたとおり、私は最近までこの本が外国人作家によるものだと思っていた。「オーデュボンの祈り」。なんとも西洋の風ただようタイトルではないか。表紙の人形も、その雰囲気をより一層引き立てる。伊坂幸太郎といえば、その表紙という感じだ。「ラッシュライフ」も、確か似たような表紙だったと思う。

内容はと言えば、日本であって日本でないどこかでの物語りだ。私は勝手に現実上のファンタジーなどと分類しているが、ほとんど日本列島と関係のない、それでも日本人の住む土地と言われると、成田良吾の「バウワウ!」とかを思い出してしまうあたり、ダメ人間だなぁと思うのだけれど。島に住んでいる人たちも中々とぼけていて面白い。やはり一際目を引くのは、喋る案山子・優午だ。彼の語りは、とても誠実そうだ。主人公はあくまでも淡々としている。頭に湯気を立てて怒ったり、顔がぐしゃぐしゃになるほど泣いたりなどしない。見知らぬ土地に放り出されて、呆然としているのだろうか…。この物語により一層スパイスを加えているのは、リアリティの世界に住む城山の存在だろうか。正気のまま狂気に走る男。とても残忍で、冷たく、賢い。彼が最後にどうなるかという結末は見えているようだが、予測できる結末もそれはそれで面白い。語りは常に淡々としている。とても分かりやすい。彼らの台詞の中には、彼らなりの信念のようなものがうかがえて、興味深い。

解説者もなかなか気がきいている。確かに、読めば分かるのだから、なぜ解説が必要なのか。本の解説をするなら、作者がすればよいだろう。解説よりも、感想にしたほうがいいような気さえしてくる。

ここまでグダグダと語っておいて、実際の本はどうなんだと言われると困るが、本当に淡々としていて、終わっても「あ、終わった」という感じなのだ。オズの魔法使いにでも会った気分になるのは、人々がやけに動物にたとえられていることと、案山子が出てくるからなかのか。1つの新たな童話を読んだような読後感だ。感想になっていないっちゃあ、なっていないと思うが…。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)