『ゆめつげ』

ドンだけ本が好きなんだ、と言われそうだが、今日はもう1冊実は読んでいる。畠中恵の「ゆめつげ」だ。「しゃばけ」シリーズがとても有名な作家だ。もちろん私も読んだ。今回も例に漏れず和モノだ。この主人公はいわゆるサイキック。夢で未来を見る神社の神官だ。彼女の描く人物の特徴なのだろうか、とても飄々としていてかわいらしい。弟に何度もひっぱたかれるお兄ちゃんて…。そしてやっぱりちょっと身体が弱いよう。どうもイメージが「しゃばけ」の若旦那に被ってしまう。

コチラもとてもミステリ。密室からの脱出あり、判じ物ありと盛りだくさんだ。それぞれに秘密を抱えた人々のやりとりを観察する弓月の様子や、夢の中の出来事について、独特の柔らかな文章でつづられている。江戸ものだからなのか、言葉づかいがユニークで面白い。普通の現代ものであったら「殴る」と書くところを「ひっぱたく」と書いたり、手妻、お大尽と、独特の古風な言葉が続く。岡っ引きなど、惚れ惚れするほどの江戸っ子ぶりだ。弓月や他の人々の台詞の言葉尻はどことなく優しげである。

畠中恵の作品にはいろいろと教訓めいたテーマが見え隠れしている感じがするが、今回は時代背景が黒船来航後ということもあり、夢で未来を告げる主人公は現代のことまでを夢に見る。今回の本の根底に流れているのは「未来」に関する何かだろうとは検討が付くものの、ふがいないことに上手く言葉にできそうにない。

ゆめつげ

ゆめつげ