『魔性の子』

今日1日で小野不由美の『魔性の子』を読破しました。十二国記を制覇してるので、勿論高里がなんなのかも最初からわかっています。でもその読み方ってちょっとつまらんかも、と思った。何も知らないで読んだほうがこれは、面白い気がします。そして十二国記を読めばいいさ!!

最初から高里のことを知っている人には、ファンタジー小説の延長になるんでしょうね。知らない人には、ミステリー・ホラー小説なのかな。高里に関わった人がどんどん死んでいく話しだし。
あらすじとしては、子どもの頃神隠しにあって1年ほど姿を消していた高里という少年が主人公。彼は“祟る”と言われていて、高里をいじめた人たちや手を挙げた人たちは必ずと言っていいほど怪我をしたり死んだりする。高校でも高里は浮いた存在で、自身も昔浮いた存在として学生生活を過ごした広瀬という教生は彼に興味を持つ。そんな中で広瀬の教育実習が進んでいくが、高里の周りで問題が起こり始める。神隠しの話題をした生徒が怪我をしたり、高里によかれと思って説教をした生徒が今度は死んだ。そこから高里の立場はどんどん悪くなっていく。この祟る話と平行して、奇妙な女の噂も出回るようになる。女は「き、を知らない?」と話しかけてくるという。知らないと答えると、霧のように消えてしまい、知っていると答えると女の連れる一つ目の犬に襲われるというもの。ある男子生徒の死亡の原因は“高里の祟り”であると、高里はクラスでつるし上げになり、窓から落とされる。彼は無事だったが、その“報復”は苛烈をきわめて行くこととなる。高里自身は誰のことも憎んではいないというのに。…まぁ、こんな感じ。
とりあえずもう、高里の境遇が不条理すぎて泣けますね。出来上がった世界観というか、そーゆーものだって決まってるのを、是非もなく突っ走って書かれていることに拍手を送りたいです。かわいそ過ぎて、どうしようもない…。最後まで読むと、ああそーゆーもんなのね、って思うけど、でもやっぱり最後まで読んでも同じ言葉を解するものとして、同じ仲間として括りたい気持ちになるね。括れないのが嫌ってほどわかって絶句する感じ。広瀬の気持ちがよくわかる。
夢見る人には辛い本じゃないでしょうかね。厭世話をしてるあたり、山に住みたいと思ってる私はかなり共感するもんがあるんだけど、それを広瀬がやっぱり現実的に無理って諦める気持ちも良くわかるし。だよねーってなる。広瀬に仲間意識を抱く人は多いんじゃないかな。それで、きっと高里にも共感するはずなんだけど、最終的に高里は広瀬、というか私達を裏切るわけですよ。私達はどうしようもない。そうやって生きるしかないんだって突きつけられたような感じですね。選ばれるとか選ばれないってゆーのは、やっぱり不条理だと思う。みんな自分の正義のためとか、自分の守りたいものの為に一生懸命なのに、全てが全て悪い方向へと行く感じで、でもそれ以外の方向へ行くしかないってのがほんと、悲しいです。とにかくずっと悲しい。
全体的に不条理の感とか、人間のエゴとかがよく見れる話です。小野さんの特徴でもないけど、キャラクターが掴みやすいし、語り口も淡白なのでどんどん読めます。その淡白な口調に言いくるめられちゃう感じ。会話も多めで、それだけ読んでも楽しいかな。これを読んだ人は、十二国記も読んで高里の出自を見るといいと思います。ようは番外編だからね。これから始まるのはいいと思うけど、これだけってのはちょっと足りない気がしますね。
こっちだと廉麟の言ってることは、殆ど電波ですね(笑)会話がかみ合わないことといったら。向こうの視点からだと、すごくいい話のような気がしてたんだけどなぁ。サンシとゴウランとか。こっちの視点から見ると、そうでもありませんね。高里にしても、サンシとゴウランの意図をどうかできるわけでもないしね。十二国記のときの癖で、高里をタカサトではなくコウリと読んでしまいます。気をつけながら読んでるんだけど、気を抜くとコウリって読んでて、また気をつけると今度は、タカリって読んでた(爆)

魔性の子 (新潮文庫)

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