『バスジャック』

ちょっと帯に釣られたかなぁとは思います。「とにかくすごい」なんて書いてあるから、思わず買っちゃったけど、そこまでガツンとくるものはありませんでした。短編集になっているのですが、私は1番最後の話がやっぱり好きかな。別れるってことに対して、すごく真摯に深く考えさせられる話です。主人公が小学生なのも読みやすいですね。全体的に奇妙な話が多いです。こういう雰囲気が好きな人にはお勧め。現実の世界なんだけど、どこか一部がおかしくて、それが本の世界では定説になってるの。たとえば本書のタイトルにもなってる『バスジャック』は、世間一般にバスジャックというのが浸透していて、しかもルールとかマナーとかいろいろ決まってて、バスジャック美学とかもある。人たちはバスジャックに慣れてるし、むしろ巻き込まれることを望んでいる。バスジャック犯がルール違反をしたり、態度が相応でない場合に反撃さえする。そんな世界の話。『二階扉』もそうですね。二階扉の存在を知らないのは、主人公と読者だけ。その世界には“二階扉”というものが浸透していて、アタリマエになってる。世界になじむ前に話が終わってしまってびっくりするやら、その話の切り取り方に感心するやらといった感じです。

バスジャック (集英社文庫)

バスジャック (集英社文庫)